孫正義氏と田原総一郎氏の対談
「電子教科書は日本を救うか」の
12月8日から6回にわたって
講談社現代ビジネスのサイトに掲載された内容から
最終回の6回目の抜粋と要約
田原:自動車メーカーはどうやれば20年後に生き残れるか。
孫:シリコンバレーから、あるいは
日本にいるコンピュータに詳しい頭脳を持った
学生を優先的に自分の会社に入れることです。
・・・車1台に20台入っているマイクロコンピュータを
1台あたり50台にする、
さらにもっと優れたチップにしてセンサーと全部連絡をし、
クラウドと交信する、と進化させていかなければいけない。
田原:日本の自動車会社はこのままじゃあ20年後にないですよ。
なぜならば、それは中国や韓国やバングラデシュやインドで、
決定的に安い車が出来ちゃうからです。
孫:そもそもグーグルが今やっている新しい自動車って何かっていうと・・・。
田原:グーグルが自動車をつくってるんですか?
孫:車を人間が操縦しないんです。
ロボットカーです。ロボットがすべてを操縦するんです。
・・・運転手も腕組んで、コーヒー飲みながら、本を読みながらでいい。
車のなかにあるコンピュータが並列処理で、
200個くらいある高速カメラ、レーザーカメラが360度スキャンする。
通りすがる相手側の自動車、横切るおばあさん、
信号、曲がり角、下り坂上り坂全部を
コンピュータの目がブワーッとスキャンしながら、
それで目的地に交通渋滞を避け、ブレーキも掛けたりする。
この自動車、グーグルが6台かな、
常時走らせて、グーグルマップのストリートビューの画像は
そのロボットカーで撮影していっているんです。
・・・人間がクルマを運転すると交通ラッシュの時でも
7%しか道路を有効活用していないんですよ。
ラッシュの時ですら、道路って93%は空き地なんです。
・・・ロボット運転自動車だけになったらどうなるかというと、
交通ラッシュがなくなって、常に事故を起こさない
田原:高いんじゃない、値段は?
孫:コンピュータですから最後は二束三文になる。
田原:今ある大企業が20年後に今のままではほとんどなくなるということです。
孫:大事なところは、組立業ではなくて、
今言ったロボットカーのようにインテリジェンスの
コンピュータで勝負するという時代になったということです。
田原:肉体労働で勝負しようとするなら
バングラデシュ並みの給料になっちゃう。
それが嫌だったら肉体労働じゃない、
インテリジェンスで勝負しようと。こういうことですね?
孫:そうです。だからね、
今すぐ電子教科書だIT国家だというと、
「それを使えない人たちは落ちこぼれて、どうしますか」
という質問が必ず出るんだけれど、
いやいや、30年後の日本の中心的労働者を育てるために
今の10歳、7歳、15歳を教育しましょうということです。
30年なんてすぐくるんです。20年なんてあっという間です。
田原:孫さんと知り合ってもう20年以上たつ。
孫さんに最初取材したときは、社員が3人だった。
孫:あっという間に20年なんてたちます。
だから日本の子どもたちの教育というのは
大学の受験に通らすための教育ではなくて、
その受験を通らすための子どもを作るための教育ではなくて、
日本の国家を作るための、
日本の天下国家を作るための教育であるべきです。
田原:一番問題なのは日本の政治・・・
予算で言えば、歳入が37兆円、歳出が92兆円、
借金が44兆円プラス10兆円。ムチャクチャでしょう。
・・・健全化するためには、誰が考えてもやっぱり歳入を増やす、
増税しかない。
だけど国民は増税を嫌がっている。
じゃあ増税が嫌なら歳出を減らす、
福祉を減らす、
地方へのカネを減らす。
それも国民は嫌がっている。
何にも出来ない・・・。
日本は三倍使っているんですよ。収入の。
孫:唯一ある答えは何か。
今すぐの問題解決は難しい。
じゃあ30年後はどうか。
30年後まで、日本のGDPを毎年平均で1%ずつ伸ばしたいか?
1%伸ばすと日本のGDPは700兆円になります。
2%伸ばしたいか。2%伸ばすと900兆円になります。
田原:すると借金を超える。
孫:・・・農業で増やせますか。漁業で増やせますか。
・・・農業、漁業全部足して、日本のGDPの2%しかない。
・・・教育すべき日本の労働人口をどこに持って行くべきかというと、
倍にしてもたった10兆円しか増えないところに持っていくんじゃなくて、
700兆円増やすためには、そのうちの40%をまかなうITなんです。
・・・頭脳で稼ぐ、頭脳労働者で稼ぐ。
これをやると、残り60%の成長も単純労働のものづくりではなくて
頭を使うものづくり、頭を、IT を使った流通、ITを使った金融サービスになる。
・・・30年後に100万倍の能力のコンピュータが生まれる。
これ一台で4億年分の新聞が入ります。
そうすると社会はどう変わるか、仕事はどう変わるか。
皆さんが社会人になった時、仕事は、社会はどう変わると思うか。
その絵を描け。それを議論してくれ・・・
だから単に単純労働で労働賃金の低い組立業、農業でも労働賃金の低い、
700%の関税で人工的に守られているというようなところに
すがりついていちゃあだめだ。
農業もITを使って、
日本の優れたタネとか農業の工法を科学的なもの、
ITを使って磨き、そのタネをベトナムで植える、
カンボジアで植えると。
そうやって世界に打って出る。
TPPの時代でも競争力を保てる農業に変えなきゃいけない。
田原:孫さんの本音はこれまで30年は当たってきたね。
・・・少なくとも今までの30年間、
孫さんが言ったことは間違っていなかった。
これからは分かりませんが、
たぶん、そうとう信用出来るとは僕は思っています。